2005.05.08

解雇理由証明書についてのウンチク

労働相談の中で一番多いのが「解雇」「賃金不払い」といったもの。
解雇にあたっての相談の時に時々解雇日や解雇予告日がはっきりしないケースがある。
解雇日と解雇予告(通知)日とは違う。
予告(通知)日とは解雇を告げた日であって、何月何日をもって解雇するのだという何月何日がその解雇日である。
これは重要なものでこれらががあいまいなままだと、そのトラブルの解決に当たっては問題がややこしくなる。

また解雇は、 労働契約を一方的に将来に向かって解約する使用者の意思表示なのだが、解雇には正当な理由がいるのだ。 つまり客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その解雇が権利濫用したものとして、無効となる。 (労基法第18条2)

また、解雇がなされてから労働者から当該解雇理由について証明書の請求があれば使用者は遅滞なく、「解雇理由証明書」 というのを書面で交付しなければならない(労基法第22条第2項)のだが、実はそれもまだ知らない会社や担当者がいることに驚く。

解雇が有効なのか無効なのかは、むろん最終的には裁判等にゆだねるしかないのだが、 労働基準法に定めていることは強行法規であってこれを行わない場合には処罰の対象にもなる。

先日も解雇し得ない理由をもって労働者を解雇したようなケースがあって労働者が解雇理由証明書を請求して、 使用者側から交付されたものの、様式で定められた要件を満たさない内容のものを交付してきたケースがあった。それでは法22条の趣旨が達せられなく、これなどは申告の対象となり労働基準監督署の指導対象になりうるのではないだろうか。

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2004.01.04

解雇された一方的な理由にサインできるか!という話し

あらかじめ他人が退職理由を書き入れた退職届のことを前に書いた。
Web社労士のココだけのblog: 労働相談の現場から バックナンバ
2003.12.26 他人が理由を書き入れた退職届とは!?

今度は、使用者が労働者に対して通知する「解雇通知書」に労働者がそれを「わかりました。」と記入を求める「確認欄」をつくっているケースがあった。
労働相談の中の一コマである。
「私はこんなもの納得できないんです」と相談者。そのとおりだろう。おそらくいつまで経っても平行線を辿るだろう。私が当事者であってもそんなものにはサインできない。
「解雇通知書」に同意確認を求めるのもナンセンスな話し。よけいにトラブルを増幅させている。そもそも解雇とは,使用者が一方的に労働契約を解除する行為である。労働者の方は、到底納得しがたいのが実際のところで合意できるハズもない。合意すれば、それは「合意退職」になるはなし。前に書いたように解雇理由は、客観的に合理的な理由があって、社会通念上相当であると認められるものか、どうか?なのである。
それに確認をさせても何になるのか、全く意図すらがわからないおかしな解雇通知書であった。

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2003.12.31

労基法の改正で「解雇紛争」はどう変わるか その4

まとめ

 改正前では、合理的理由を欠き社会通念上相当でないとされる、不当な解雇が行われていても多くが口頭による解雇がほとんどで、解雇されてから後でしか退職証明書でもらうことが法的には義務づけられていませんでした。後からでは、なかなか解雇を撤回させたり、その不当性をあらそう労働者の方は、これまでごく一部だったといえます。

ところが、今回の改正では、解雇を予告された場合には、解雇前でも労働者は「解雇理由証明書」を使用者に対してもらうことができるようになったので、その時点で解雇の不当性を争っていくケースは以前よりは多くなってくるのではないかと予想されます。

その時に使用者が「解雇理由証明書」を交付してくれなければ、労働者は改正法22条違反により監督署に申告して、交付してもらうことを促すことができるようになり、その罰則規定も出来ました。使用者が「解雇理由証明書」を交付しないことについては、監督署の行政指導は行われるでしょう。

その「解雇理由証明書」により、使用者の解雇理由が明らかとなります。
その場その場で言い繕っていた解雇理由が口頭だけでは通用しなくなります。
この交付義務に反して、使用者が解雇理由を明示しなかった場合や明示した解雇理由を後日コロコロと変更したような場合には、その解雇の有効性はいっそう否定される要素となるでしょう。

「解雇理由証明書」を書面でもらうことにより、労働者はその内容に不満があれば、さらに上記の労働局の「個別労働関係紛争の解決援助サービス」の活用により行政に解決の支援を求めることができます。
その制度の中で理由そのものについての客観的な検討が行われ、解雇権濫用になる解雇についてはその違法性の可能性について指摘されるでしょう。もちろん、その解雇が内容的に有効か無効かの判断は、これまでどうり最終的には裁判所の判断によることにはなります。

個別労働関係紛争の解決制度についても、その労働局のあっせんなどは裁判の判決のような強制執行力がないので、改正法の実効性を疑問視する声もあります。このあっせんに応じるかどうかも、基本的には任意となっていますので、すべての案件がここで解決できるとも限りません。しかしながら、労働局の紛争解決制度に持ち込まれる相談件数やあっせん件数は年々多くなっています。これはこの制度がより浸透されてきた成果だといえましょう。
今後は「労働審判制度」が設置されそうですし、労働紛争処理のルートがさらに広がり、個別労働紛争の解決ツールも多様になることが予想されます。

労使の代表にも「評決権」 司法制度改革の労働審判(京都新聞:2003.12.18)

「解雇紛争」にあたっては、たんに解雇予告だけすればよいというだけはなく、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であるとして、問題のないもの、つまりその解雇が有効といえるものかどうかについて、使用者はこれまでに増してじゅうぶんな検討をしておくことがいっそう必要になってきたといえましょう。

使用者が解雇紛争によるリスク回避のため、注意をしておくことを最後にまとめておきます。

1.解雇を予告する場合には、「解雇理由証明書」の請求に適切に対応できるように準備しておくこと。

2.解雇するときには、それが解雇権の濫用とされないかを、手続き面とあわせて検討しておく。整理解雇の場合などでは四要件すべてを満たしているかチェックしておくこと。

3.就業規則についても見直しをはかり、「解雇の事由」を明確に記載しておくこと。労働条件の明示事項に「解雇の事由」を記載するようにすること。

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労基法の改正で「解雇紛争」はどう変わるか その3

改正法施行後に予想される、解雇紛争のシミュレーションの一例です。

 ある日、A君は突然社長から呼び出され、口頭で一ヶ月後に解雇する旨を告げられた。理由については具体的に示されなかった。

 社長は30日前に解雇通知をしたから、それでいいと思っている。

 A君は、すかさず社長に対して言った。「解雇される理由がわかりません。社長、解雇の理由について証明書を下さい!労基法で決められているから当然頂けますよね。」

 社長「???」

(実は、あまり労基法のことを知らないが、電話で監督署に照会すると法律で義務づけられ、渡さないと労働基準法違反になることがわかった。さっそくFAXで様式を送ってもらった。)

 社長「そうか。それならあとで書いて渡すわ。」と答えるが、その理由づけが後日問題となる。

 その後、社長から、なんとか「解雇理由証明書」をもらったA君。

 A君「社長!こんな理由では納得できません。解雇を撤回して下さいよ。」
 社長「30日前に言っているから、問題は無い!いまさら撤回などできるか。」

 と、かくして社長とA君との主張はぶつかり合い、平行線をたどることとなる。

 そこで、A君は相談に地元の労働基準監督署を訪れることとした。

 監督署に設けられている総合労働相談コーナーにて、その解雇理由証明書を総合労働相談員に見せた。

  総合労働相談コーナーの御案内 ※この相談コーナーは各県の主な監督署や労働局企画室などに設置されている。

相談員のアドバイスで、A君は、裁判まではいかないまでも労働局の「個別労働関係紛争の解決援助サービス」を利用することとし、あっせんを求めた。A君は、さらに解決するまでの期間は、これまでなかなか使えなかった有給休暇を請求して取得し休むこととした。2年間の有給休暇が使えるので1ヶ月はゆうに休めた。

Excite エキサイト : ニュース 監督署で解雇紛争扱わず 厚労省、改正労基法で通達

 労働局のあっせんが行われ、弁護士や社会保険労務士のあっせん委員から、これまでの判例等からその解雇の経過、理由については問題があるのではないかとの指摘を受けた。あっせん委員は、社長に対して解雇の撤回を勧め、それが出来ない場合には金銭等の補償によるあっせん案が示された。

さすがに今回の解雇理由では、社長は分が悪いことを知り、このあっせん案にしぶしぶながらも応じざるを得なかった。労働基準監督署には是正勧告を受けたことがあり、労働局の指導を無視することは出来なかった。

加えて、会社の就業規則には「解雇事由」の記載も無かったし、労働契約締結時における「解雇の事由」の明示も示されていないようであった。これについても、法違反となることがわかり、これは労働基準監督署から直接是正指導を受けることになった。

社長は、これからは解雇する際には、じゅうぶんに注意しなければならないことをつくづく思い知ったのである。

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労基法の改正で「解雇紛争」はどう変わるか その2

 労働者が解雇されたとき、特に「解雇の予告」要件を満たさない解雇にあたっては労働者は最寄りの監督署に相談または申告をされることがよくあります
「解雇の予告」要件を満たさない解雇とは、具体的にどういうものかを説明しましょう。
使用者は労働者に対して解雇するときは30日前までに予告しなければなりませんが、その期間が足りないまま解雇しているケースがあります。
その期間が足りない分はどうなるかと云いますと、その日数分以上の平均賃金の額を使用者は解雇した労働者に支払わなければなりません。いわゆる「解雇予告手当」と呼ばれるものです。
即日解雇、つまり「明日から来なくて云い。今日でやめてくれ。」とその日に云うと30日分以上の平均賃金の解雇予告手当を解雇通告とともに支払わないと、労働基準法の手続きの面から無効となります。いわゆる法20条違反となるわけです。
内容的にどうとかというのではありません。要するに30日前に解雇予告されたかどうか、予告日数が足りないなら、その日数分以上の解雇予告手当を支払われているかが問われるわけなのです。(解雇予告を要しない例外規定もありますが。) 

【得ダネふぁいる】労働基準法編〈1〉急な解雇には「予告手当」 : 安心の設計 : 医療と介護 : YOMIURI ON-LINE (読売新聞)

解雇をめぐる労働基準監督署の行政指導では、その「解雇の予告」要件を満たさない、つまり、手続きの要件を満たさない解雇について、その手続きを欠けたことによる20条違反にもとづく行政指導を行うのが一般的です。

その解雇が内容的に有効なのか、無効なのかの点については、最終的には裁判所しか判断を下せませんし、その解雇が内容的に問題があったとしても監督署としては、そのことを事業主に対しては是正指導はできません。その場合、労働者がその無効を主張していくには最終的には裁判などでの民事訴訟になってくるわけです。解雇の有効、無効を裁定するところはあくまでも司法の場であるということです。

(もっとも近年こうした解雇トラブルをはじめとする労働紛争の増大により、※ [個別労働紛争解決制度」 で労働局長による当事者間の紛争を助言・指導あるいはあっせんをおこなって解決する途も開かれています。)

個別労働関係紛争対策概要

今回の労働基準法改正で、解雇紛争にあたっては、これらの様子がいくぶん変わってくることが予想されます。

就業規則への「解雇事由」の記載(第89条第3号)と労働契約締結時における「解雇の事由」の明示、労働者が解雇されて日から退職の日までの間においても、解雇の事由についての証明書を使用者に請求出来る(第22条第2項)ことになりました。改正前は退職後しか請求出来なかったのですが、特に今回の改正では在職中から出来ることとなりました。

在職中から請求できることにより、労働紛争はどう変わるのかは、さらに次回にシミュレーションして考えてみましょう。

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2003.12.30

労基法の改正で「解雇紛争」はどう変わるか その1

労働基準法の改正がいよいよ2004年1月1日から施行されます。今回の改正をまとめると、大きく分けて次の三点となります。

1.有期労働契約に関する改正
2.解雇に関する改正
3.裁量労働制に関する改正

このうち、実務上でもっとも事業主や労働者の方に注意してもらいたいことは、やはり2.の解雇に関する改正だといえます。

 解雇をめぐるトラブル相談で、これまでもよく問題となっていたのは、その解雇に、客観的に合理的な理由があって、社会通念上相当であると認められるものか、どうか?という点です。法律的な抽象的表現でなかなかわかりにくいのですが、大雑把な表現ですが「ごもっともである。」と第三者が判断できる相当な解雇理由であれば有効であるということです。

「解雇」をめぐっては、内容的に有効か、無効か についての面と手続き的に労基法の基準を満たしているか、どうかの二面があります。改正前の労基法の規定では、手続きのことである第20条での「解雇の予告」が決められていただけに過ぎなかったのですが、このたびの改正ではこの「解雇権濫用法理」が法律に明記されました。
「では、明記されてどうなるのか?」という点ですが、今回の改正によって「使用者側に主張立証責任を負わせている現在の裁判上の実務を変更するものではない。」との立法者の意思が明らかにされています。つまり「解雇訴訟での裁判実務には今後も変更はないでしょう。」ということです。

では、実務的には何の変化もおこらないのでしょうか?
解雇についてトラブルとなるケースや、使用者、労働者が改正内容を受けて今後注意すべきことは、どういう事柄なのでしょうか?
それは次回にさらに述べてみたいと思います。

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2003.12.27

離職票を会社がわたしてくれない!

2003.12.26 他人が理由を書き入れた退職届とは!?

の話しの続き

相談者が心配されていたことが実はもう一つあった。会社の人がいうのには、「他人が退職理由を書き入れた退職届」にサインしないと雇用保険の受給手続きに必要な離職票(雇用保険離職票-1,雇用保険離職票-2とがある。)をあげないよ!]と言われたとのこと。相談者は「会社から離職票がもらえないと職安に行っても失業保険の手続きが出来ない!」と、大変お困りのご様子である。相談を受けていると、結構そう思われている方が多い。

「大丈夫ですよ。離職票を会社が渡してくれないなら、くれないでいいですよ。そこで変に争うこともないでしょう。」と答えた。

 本来、会社(事業主)には雇用保険被保険者に関する届出義務がある。雇用保険法施行規則第17条により公共職業安定所長は被保険者であった者に対し離職票を交付する義務がある。ただ同条により資格喪失届の届出時に事業主を通じて交付してよいことになっている。そのため実務として事業主から渡されるのが殆どであるため渡してもらうのは会社からと思われている。
法律的には交付する義務があるのは、公共職業安定所長なのである。また同法施行規則第16条により、離職票交付に必要な離職証明書の交付については事業主にその義務がある。

「離職証明書や離職票などの交付をしてもらえない、また被保険者に関する届出を会社(事業主)がしてくれない場合にはどうすればいいのでしょうか?」とのお問い合わせもよくある。

その場合は、「ハローワークにその旨の申し出をするとよい。」ということを覚えておいて欲しい。雇用保険第8条に(確認の請求)があり、同法第9条(確認)により厚生労働大臣(ハローワーク)は職権で労働者が被保険者でなくなったことの確認を行うこととなっているので、事業主に対してこれら届出の催促をしてもらえるはずである。相談者には「退職の翌日から10日を過ぎてまだ何日か経っても離職票の交付が遅れるようであればハローワークに相談されるといいでしょう。」と付け加えておいた。

また、これら資格喪失に関する手続きは退職の日の翌日から10日以内にしなければいけないことにもなっている。届出があまり遅れると労働者に不利益が生ずる場合も出てくることもある。


ハローワークインターネットサービス
雇用保険離職票-1

ハローワークインターネットサービス
雇用保険離職票-2

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2003.12.26

他人が理由を書き入れた退職届とは!?

 調剤薬局に勤めていた女性が相談に来られた。その方は職場でのいじめや嫌がらせ、冷遇から辞めたいと思い始め、口頭で退職を申出ていたらしい。ところが、会社から退職届を出すようにと言ってきた。まあ、ココまでは通常の手続上の話しといえば話し。問題はそのあと。
「会社は退職届を出さないと辞めさせないと言っている。どうしたらいいのでしょうか?」と助言を求めてこられたのだが。本人が見せた会社所定の退職届の用紙には「自己都合による」と既に書き入れられていたのである。
退職届は労働者本人が作成すべき書類。それに他人が退職理由を既に書き入れているのは、おかしなことではある。
「労働者の退職の申出は法令上は口頭でもよく、書面である必要はありません。民627条に定める【期間の定めの無い解約の申し入れ】予告期間を経ていればあなたがその書面(自己都合と書き入れられた書面)をそのまま出したくなければ出さないでもいいでしょう。」と答えた。
この事例、口頭の申出に対して使用者側も承諾して退職日も決まっているようだし、退職届の提出はたんに形式的なものとして存在しているにすぎないと考えられたのである。「自己都合による」と既に他人に書き入れられた退職届を提出してしまうと、本人が雇用保険の基本手当の「特定受給資格者」に該当しなくなる可能性が生じてくることも懸念されたのも、出さない理由の一つ。まして本人がたんなる「自己都合」で退職したとは納得されていない以上、納得していない書面を出さないのは一番。かりに就業規則で退職届を義務づけていたとしてもその退職の申し込みまでは否定し得ないと考えられたのである。

茨城労働局 退職の申出は2週間前までに

退職の申出は2週間前までに

ハローワークインターネットサービス

●「解雇」等により離職した者

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2003.12.21

未払い賃金立替え払い制度

国の制度に、倒産や破産した会社から賃金が支払われない従業員の方のために、その事業主に代わって労働福祉事業団が立て替え払いをする制度があって、この不況下多くの方がこの制度によって救われている。
先日聞いたケースでは、破産した会社の元従業員の方が未払い賃金の請求にあたって、裁判所から選任された破産管財人(弁護士)の方がこの請求手続きや未払い賃金額などについての証明に協力していただけなくてご苦労されているという話を聞いた。なんとも気の毒な話であると同時に本来の責務からいってどうなのかな?ということを感じた。
これら証明を受ける先は、その会社が破産宣告など裁判上の倒産処理手続きに至った場合と、そうでない場合とによって未払い賃金額の証明を破産管財人又は労働基準監督署が行うことになる。

【参考記事】
【得ダネふぁいる】労働基準法編〈2〉倒産未払い賃金の立て替え : 安心の設計 : 医療と介護 : YOMIURI ON-LINE (読売新聞)

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