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2003.12.31

労基法の改正で「解雇紛争」はどう変わるか その4

まとめ

 改正前では、合理的理由を欠き社会通念上相当でないとされる、不当な解雇が行われていても多くが口頭による解雇がほとんどで、解雇されてから後でしか退職証明書でもらうことが法的には義務づけられていませんでした。後からでは、なかなか解雇を撤回させたり、その不当性をあらそう労働者の方は、これまでごく一部だったといえます。

ところが、今回の改正では、解雇を予告された場合には、解雇前でも労働者は「解雇理由証明書」を使用者に対してもらうことができるようになったので、その時点で解雇の不当性を争っていくケースは以前よりは多くなってくるのではないかと予想されます。

その時に使用者が「解雇理由証明書」を交付してくれなければ、労働者は改正法22条違反により監督署に申告して、交付してもらうことを促すことができるようになり、その罰則規定も出来ました。使用者が「解雇理由証明書」を交付しないことについては、監督署の行政指導は行われるでしょう。

その「解雇理由証明書」により、使用者の解雇理由が明らかとなります。
その場その場で言い繕っていた解雇理由が口頭だけでは通用しなくなります。
この交付義務に反して、使用者が解雇理由を明示しなかった場合や明示した解雇理由を後日コロコロと変更したような場合には、その解雇の有効性はいっそう否定される要素となるでしょう。

「解雇理由証明書」を書面でもらうことにより、労働者はその内容に不満があれば、さらに上記の労働局の「個別労働関係紛争の解決援助サービス」の活用により行政に解決の支援を求めることができます。
その制度の中で理由そのものについての客観的な検討が行われ、解雇権濫用になる解雇についてはその違法性の可能性について指摘されるでしょう。もちろん、その解雇が内容的に有効か無効かの判断は、これまでどうり最終的には裁判所の判断によることにはなります。

個別労働関係紛争の解決制度についても、その労働局のあっせんなどは裁判の判決のような強制執行力がないので、改正法の実効性を疑問視する声もあります。このあっせんに応じるかどうかも、基本的には任意となっていますので、すべての案件がここで解決できるとも限りません。しかしながら、労働局の紛争解決制度に持ち込まれる相談件数やあっせん件数は年々多くなっています。これはこの制度がより浸透されてきた成果だといえましょう。
今後は「労働審判制度」が設置されそうですし、労働紛争処理のルートがさらに広がり、個別労働紛争の解決ツールも多様になることが予想されます。

労使の代表にも「評決権」 司法制度改革の労働審判(京都新聞:2003.12.18)

「解雇紛争」にあたっては、たんに解雇予告だけすればよいというだけはなく、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であるとして、問題のないもの、つまりその解雇が有効といえるものかどうかについて、使用者はこれまでに増してじゅうぶんな検討をしておくことがいっそう必要になってきたといえましょう。

使用者が解雇紛争によるリスク回避のため、注意をしておくことを最後にまとめておきます。

1.解雇を予告する場合には、「解雇理由証明書」の請求に適切に対応できるように準備しておくこと。

2.解雇するときには、それが解雇権の濫用とされないかを、手続き面とあわせて検討しておく。整理解雇の場合などでは四要件すべてを満たしているかチェックしておくこと。

3.就業規則についても見直しをはかり、「解雇の事由」を明確に記載しておくこと。労働条件の明示事項に「解雇の事由」を記載するようにすること。

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